AGA治療の選択肢ひとつであるNHT式自毛植毛は、アメリカで4000人以上もの植毛手術を実施した経験を持つスティーブ・チャン博士が、できるだけ苦痛の少ない手術を目指して開発した植毛法で、カリフォルニア州のNHTメディカルセンターで採用されていますが、この医療機関の分院は東京や大阪にもあって、日本でも施術を受けることができます。ナチュラル・ヘア・トリートメントを意味するNHT式自毛植毛は、側頭部や後頭部の皮膚を横に細長く(幅1cm長さ20~25cmほど)切り取り、この皮膚を顕微鏡下で毛包単位に切り分け、前頭部や頭頂部の植毛したい場所に小さなスリットを入れ、そこに毛包をひとつずつ植えていくという方法で、FUT法の一種ということができますが、一般的なFUT方に比べたときのメリット・デメリットには、どのような点があるでしょうか。
NHT式自毛植毛の最大のメリットのひとつは、「まるで散髪をしているようだ」と言う人もいるほど、手術のときの痛みが少なく、テレビやビデオを見ながら手術を受けたり、手術中に一時休憩して食事を取ったりできることで、これはNHTメディカルセンターが独自に開発したトゥワイライト麻酔とツメッセント麻酔を使用しているためです。次に生着率95%以上の高さも大きなメリットで、場合によっては110%すなわち植毛前より毛が増えたケースもありますが、その理由は休止期の毛根も捨ててしまわずに活用できることで、NHT式では毛根数の異なるマイクログラフト(1~2本)、フォリキュラーグラフト(2~3本)、ダブルフォリキュラーグラフト(3~5本)に分けて植毛するため、生着率を上げるだけでなく仕上がりを自然に見せ、髪のボリュームを出すこともできます。
さらに1回の手術で大量の毛髪を移植できることもメリットで、だいたい株数にして2000~3000株、本数にして5000~7000本とされていますが、標準的な移植手術では2000本程度が一般的ですから、2回の手術を1回で済ませられることになり、時間的にも体力的にも負担を軽くすることができます。この方法をメガセッションと呼んでおり、熟練した数人の医師と看護師が協力して、集中的に緻密な手術を行なうことで可能になった方法で、生え際などの自然さも十分に考慮しながら植毛していきますが、ドナーの状態や移植面積等によっては、誰にでも施術できるわけではないので注意が必要です。逆にデメリットとしては、FUT法に共通した弱点のひとつですが、後頭部にメスを入れて頭皮を切り取るため、縫った跡が傷になって残ってしまい、スポーツ刈りなどの短髪にすると目立つ点が挙げられます。ただしこの点についても、トリコフィティック縫合法という対策が用意されており、傷跡の上に表皮をかぶせて縫い合わせることで、その部分から新しい毛が生えてくるため、傷跡を目立たなくすることができます。
一般に植毛手術では頭部全体の毛髪量を増やすことはできないため、どの部分の毛髪をどこへ移植するかが大きな問題になり、下手な手術をすると不自然さが目立つ結果になりますが、NHT式自毛植毛では移植部分を綿密に計算して計画的に植毛を行なうので、仕上がりの美しさが口コミでも好評を得ています。また痛みをほとんど感じない点や、1日で手術を終えられる点も評価の高いポイントですが、その反面専門のスタッフが細かい作業を行なうため、どうしても費用は高くなりがちであり、また手術方法によっては傷跡が残ってしまう点にも注意しなければなりません。手術前には無料カウンセリングなどを利用して、じっくりと不安を解消することが必要です。